第二話『ずんだ打ちに時なし』
東北とずんだを応援する版権フリーのキャラクター「東北ずん子」のSS第二弾ですよ!
――それは、世紀末のような光景でした。
ズンダモチイィーーーフ!!o(*>▽<*)o!!
何かに取り憑かれたかのように、ヒャッハーと叫ぶずん子がキリキリと弓の弦を引きます。
矢尻には、もちろんずんだ。お餅に向かって射ることで、それをずんだ餅に変化させてしまうというピーキーな代物です。
いつも通りなら、彼女の矢の向かう先はお餅であるはずなのですが――。
矢尻には、もちろんずんだ。お餅に向かって射ることで、それをずんだ餅に変化させてしまうというピーキーな代物です。
いつも通りなら、彼女の矢の向かう先はお餅であるはずなのですが――。
――ずんねえさま……やめてあげてください……!
『そうだにゃあ! 言霊たちが怯えてるんだにゃあ!』
止めても無駄ですよ! イタコ姉さま、きりたん!(`・ω・´)キリッ
正気を失ったずん子に対して、離れた場所から怯えたように声を掛けるきりたん、言霊たちを呼び出して静止の呼びかけをするイタコ姉さま。これはただ事ではありません。
必死の呼びかけが続きますが、二人の声は虚しく響くばかり。ずん子は熱に浮かされたような表情で、高らかに宣言しました。
必死の呼びかけが続きますが、二人の声は虚しく響くばかり。ずん子は熱に浮かされたような表情で、高らかに宣言しました。
今日から、モチーフという言葉は『ズンダモチーフ』(Zundamochif)に取って代わります!( *^皿^)
「持ち物」は「ずんだもち物」! 「ヤキモチ」は「ヤキずんだもち」!(`・ω・´)キリッ
「持ち物」は「ずんだもち物」! 「ヤキモチ」は「ヤキずんだもち」!(`・ω・´)キリッ
高らかに宣言しながら町を練り歩き、「もち」という単語を見かけては矢を放ち、「ずんだ」を頭に付けていく暴走乙女――東北ずん子。
その瞳は恍惚の輝きに満ちていて、まるで世界がずんだ餅にまみれていく光景に、この世の終わりを見ているかのようでした。
その瞳は恍惚の輝きに満ちていて、まるで世界がずんだ餅にまみれていく光景に、この世の終わりを見ているかのようでした。
『ああっ……モチベーションがやられたにゃあ……! ズンダモチベーション(Zundamochivation)に……!』
あっはっはっはっはっは!d(゚∀゚d) ずんだは国境も越えます!(`ω´) 越えてみせます!
――ど、どうしてこんなことに……。
仲間の被弾を告げるイタコ姉さまの哀しげな声。それとは正反対に、高笑いするずん子の声。
阿鼻叫喚の状況を離れた場所から眺めながら、きりたんは立ち尽くしてそう漏らします。
きっかけは、他愛もない会話でした。
阿鼻叫喚の状況を離れた場所から眺めながら、きりたんは立ち尽くしてそう漏らします。
きっかけは、他愛もない会話でした。
――ほんの少し、時間を戻しましょう。それは、ちょっとだけいつもとは違う雰囲気の食卓の風景から始まります。
――…………(ソワソワ
((( ;゚Д゚)))((( ;゚Д゚)))((( ;゚Д゚)))(キョロキョロ
――……………………緊張しますね。
ですわ……( ゚ω゚;)(ゴクリ
お昼ご飯の時間。ですが、食卓にいるのはいつにも増して口数が少ないきりたんと、背筋をぴんと伸ばして唾を飲み込むイタコ姉さまの二人だけです。
梅雨なのに快晴の空。本日の東北家の食卓は、少しだけ、異様な雰囲気をかもし出していました。
梅雨なのに快晴の空。本日の東北家の食卓は、少しだけ、異様な雰囲気をかもし出していました。
できましたーヽ(≧▽≦)ノ!!ずん子特製、ずんだ創作料理第748弾!!
∑(゚д゚*)(ビクゥ
こ、今回は、ちゃんと食べられる料理が……じゃなくて、どんなおいしい料理かしらですわですの!(゚´ω`゚)
過去を思い出すことが得意なイタコ姉さまは、口寄せと同じ要領で――過去747回のずん子の挑戦を思い返します。
たしか、まともに食べることができて、商品化したのは12品。
割合にして、一分六厘。野球選手なら即解雇レベルの打率です。
たしか、まともに食べることができて、商品化したのは12品。
割合にして、一分六厘。野球選手なら即解雇レベルの打率です。
普段からずんだを作っているくらいですから、別に、ずん子は料理が下手なわけではありません。
むしろ得意な方です。家事も一通り無難にこなしますし、お嫁さん力は高い方です。
そのはずなのですが――。
むしろ得意な方です。家事も一通り無難にこなしますし、お嫁さん力は高い方です。
そのはずなのですが――。
(――ずんだのこととなると、盲目になってしまいますからね……。ずんださえ乗っていれば、自動的に「おいしい」と感じる味覚を持ってますから)
今日はですねー(ノ▽〃)、芸術点も考慮して、ずんだでジオラマを作ってみましたよ!
もちろんずんだは森の木々です!
もちろんずんだは森の木々です!
(ジオラマ……? ということは、この下にある大地代わりの赤みがかった塊はお餅、かしら?
……あれ? 意外とまともですわ?)
……あれ? 意外とまともですわ?)
あ、それお餅じゃないんですよ、イタコ姉さま。ずんだ餅は創作料理にしなくても十分おいしいですから、別の素材を試してみました。
イタコ姉さまが箸先で赤い塊をツンツンと突いていると、それに気付いたずん子が注釈を加えます。
無難にお餅にしておけばいいのに、それをしないのは見えてる地雷への第一歩です。
「思ったよりまともかも」と錯覚して安心しかけた食卓に、再び緊張感が戻ってきました。
無難にお餅にしておけばいいのに、それをしないのは見えてる地雷への第一歩です。
「思ったよりまともかも」と錯覚して安心しかけた食卓に、再び緊張感が戻ってきました。
――で、では、ずんねえさま。この赤くてプルプルした物体は一体……。
ホタルイカだよ(*´∀`*)!! きりたん!
――……は?
だから、ホタルイカのずんだ和え。きりたんがこの間「ホタルを見てみたい」って言ってくれたおかげでインスパイアされたの! ぷりっぷりのホタルイカとずんだを一口でぱくっと!ヽ(≧▽≦)ノ ささ、食べてみて食べてみて!
自信満々のずん子の表情を見ると、イタコ姉さまもきりたんも何も言えなくなってしまいます。
二人は「へー」とか「そうですかー」とか、適当な相槌を打って、なんとか「それ」を口に入れるタイミングを遅らせる以外に、逃げ道はありません。
二人は「へー」とか「そうですかー」とか、適当な相槌を打って、なんとか「それ」を口に入れるタイミングを遅らせる以外に、逃げ道はありません。
(あなたがホタルとか言ったからホタルイカになったんじゃないんですの……? お先にどうぞですわ……)
(――いえ、やはりここは年の功。それに、イタコねえさまって略してタコじゃないですか。お仲間でしょう? 供養してあげてくださいな)
……食べないの? まずそうかなあ(´;ω;`)
ちゅっ!?∑(゚д゚*) ち、違うんですのよずんちゃん! これがジオラマだって言うから、すぐに食べてしまうのがもったいなくて!
――と、ところで……これはなにが“モチーフ”なんですか? ずんねえさま。
モチーフ? モチーフはねえ、白神山ち…………。
……………………「もち」ーフ?(´・_・`)
青森&秋田の世界遺産「白神山地」の名前を出しかけたずん子でしたが、何かに気がついたように、動きを止めます。
イタコ姉さまときりたんが不思議そうに目を合わせますが、ずん子は二人のようすなど気にせず、眉間に皺を寄せて、何かを考えていました。すると――。
イタコ姉さまときりたんが不思議そうに目を合わせますが、ずん子は二人のようすなど気にせず、眉間に皺を寄せて、何かを考えていました。すると――。
ずん子の金色の瞳の焦点が、ふわりと、宙に浮きます。室内だから風が吹いていないはずなのに、彼女の艶やかな長髪が、ざわざわと、不気味にざわめきます。
きりたんとイタコ姉さまには見覚えがありました。ずん子のこの姿、それは――。
きりたんとイタコ姉さまには見覚えがありました。ずん子のこの姿、それは――。
……ふふっ……(`・ω・´)
……あははははははははははっ!!
……ず、ずん子ちゃんのバーサーカー状態……? 半年近く見てないから、安心してたのに……。
フハハ! 「ちょっと強引にずんだ餅を普及させても委員会」会長(現会員一名)としては、甘んじて「餅」という言葉を受け入れているだけではいけないと、以前から思っていたのです……(*`エ´*)(キリッ
そう。ずん子は時々、ずんだへの愛が暴走する日があるのです。
ずんだ餅が好きで好きで仕方がなくて、世の皆さんにもっともっとずんだ餅のことを知ってもらいたくて、時折豹変するずん子のもう一つの人格――それは――
ずんだ餅が好きで好きで仕方がなくて、世の皆さんにもっともっとずんだ餅のことを知ってもらいたくて、時折豹変するずん子のもう一つの人格――それは――
――裏モード“The ZUNDA”――。
――そして、冒頭の展開に戻るのです。
町にはずん子の放った矢の残骸がそこかしこに残っています。やられた言霊たちは数知れず。イタコ姉さまが必死に彼女を説得しているかたわらで、きりたんは、敬愛する姉の豹変を複雑な気持ち――いえ、「気ずんだ持ち」で眺めることしかできません。
足りない……もっと、もっと効果的なもの……。ずんだ餅に風格を与え、ブランドにしてしまうような決定的な言葉はないのでしょうか……(`ω´)(キリッ
『ずん子ちゃん! もうやめるんだにゃあ!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。 私は全国の倉持さん代表だにゃ! 倉ずんだ持さんなんかにされたらどうやって印鑑の円の中に文字を収めればいいんだにゃあ!』
『私は大伴家ずんだ持ですにゃ! これじゃあ全国の小中学生に示しがつきませんにゃ!。゚(PД`q*)゚。』
――確かに……歴史上の貴族の人に、「~持さん」って多いですし……。イタコねえさま、大忙しですね……。
うふふふふ。ずんだの名を冠することができるのです。むしろ光栄じゃないですか(〃ω〃)!(キリッ
このまま教科書にも「ずんだもち」の響きを増やしていけば……いずれは……。
……はっ! そうです!∑(・ω・ノ)ノ!
このまま教科書にも「ずんだもち」の響きを増やしていけば……いずれは……。
……はっ! そうです!∑(・ω・ノ)ノ!
代わる代わる口寄せを行ってずんだ被害者の言霊を呼び出すイタコ姉さまでしたが、ずん子は聞く耳を持ちませ……ではなく、「ずんだ持ち」ません。
風を受け流す柳のように、彼らの訴えを却下していたずん子。しかし――ふと、弦を引く彼女の腕が止まりました。
風を受け流す柳のように、彼らの訴えを却下していたずん子。しかし――ふと、弦を引く彼女の腕が止まりました。
彼にお願いすればいいじゃないですか!(`・ω・´)キリッ
ねえさま! 口寄せです! 藤原道長さんを呼んでください!
ねえさま! 口寄せです! 藤原道長さんを呼んでください!
『にゃ……にゃんですと? その前にこの大伴家ずんだ持の訴えを……』
いいですから! 早く!(`・ω・´)キリッ
ちゅ、ちゅぃ……(゚´ω`゚) 分かったですわ……ごめんなさいですわ、家ずんだ持さん。゚(PД`q*)゚。
ちゅっちゅっと参上! 藤原道長さぁ~ん!!
ちゅっちゅっと参上! 藤原道長さぁ~ん!!
有無を言わせぬずん子の威圧感の前では、家ずんだ持さんとイタコ姉さまに拒否権はありませんでした。
彼女は両腕を天に高く突き上げると、忍風戦隊ハ○ケンジャーのOPのように、ヤケクソになって叫びます。
彼女は両腕を天に高く突き上げると、忍風戦隊ハ○ケンジャーのOPのように、ヤケクソになって叫びます。
――効果は、すぐに現れました。
イタコ姉さまの動きが平安貴族のようにのんびりになり、恰幅が良さそうな表情へと変化していったのです。
――とはいっても、額に冷や汗を浮かべたままでしたが。
イタコ姉さまの動きが平安貴族のようにのんびりになり、恰幅が良さそうな表情へと変化していったのです。
――とはいっても、額に冷や汗を浮かべたままでしたが。
『……え、え~っと、儂に何か用かにゃあ……? え(*`ロ´ノ)ノ!?用がない? あははそれはよかった。じゃ、用がないにゃら儂はさっそく帰らせてもらうにゃ』
(――露骨に怯えてますね……。ここに来る前に知ってたんでしょうか。
まあ、偉人さんネットワークにも被害者がたくさんいますから……ズンダモーチァルトさんとか)
まあ、偉人さんネットワークにも被害者がたくさんいますから……ズンダモーチァルトさんとか)
どこから噂を聞きつけたのか、降霊するやいなや、即座に背中を向けて逃げ出そうとする道長さんでしたが、今のずん子から逃げられるべくもありません。彼女は、あっさりとイタコ姉さまの細い肩をつかまえて、道長さんを無理矢理自分の方へと向き直らせます。
そして、ずいっと顔を寄せると――。
そして、ずいっと顔を寄せると――。
……道長さん。あなたは話が分かる人だと聞きました。だから教科書の文字にずんだを射ずに、こうしてお呼びしたのです(`ω´)(キリッ
『にゃ、にゃあ……そうでござるか。拙者、腐っても平安貴族でおまんがにゃあ……』
(――もはや口調がめちゃくちゃですね……。語尾が「にゃあ」で統一されていますから、口寄せ自体は成功しているのでしょうけど)
ぜひ、詠み直していただきたいのです(o'∀'o)ノ! あの歌を!!
『にゃ……にゃんのことかにゃあ……。「もち」が入ってる自分の歌なんて、儂は知らんにゃあ……(¬_¬)』
またまた~(*´∀`*)。 教科書にも載ってるんですよ~!
……知らないわけないですよね?(`・ω・´)キリッ
……知らないわけないですよね?(`・ω・´)キリッ
ずん子がさらに詰め寄ると、道長さんは観念したように肩を落としました。かつて平安時代に栄華を築いた彼も、ずんだ餅拡散モードのずん子の前では形無しです。
彼はずん子から和紙と筆を受け取ると、不本意そうに、寂しそうな顔で、和歌をしたためました。
彼はずん子から和紙と筆を受け取ると、不本意そうに、寂しそうな顔で、和歌をしたためました。
『この世をば わが世とぞおもふ ずんだもち月の 欠けたることぞ なしと思へばにゃあ』
(――字余り……)
ふふふ……、証拠いただきました!(´>∀<`)ゝビシッ
これであとは、全国の小中学生さんたちにこの和歌を覚えてもらうだけです! 必ず教科書に出てくる和歌ですから、認知度もバツグンですね!
これであとは、全国の小中学生さんたちにこの和歌を覚えてもらうだけです! 必ず教科書に出てくる和歌ですから、認知度もバツグンですね!
「ずんだもち月」って……。
ああ道長さん泣かないでくださいですわ(ノ∀;`) よしよし、わざわざありがとうございますですわ。
ああ道長さん泣かないでくださいですわ(ノ∀;`) よしよし、わざわざありがとうございますですわ。
ずん子の表情はまさに幸せ絶頂期の道長さんのよう。逃げるようにすごすごと去っていった道長さんの霊を慰めるイタコ姉さまとは対照的です。
バーサーカーずん子は何度か和歌を見つめてニヤニヤしていましたが、「そういえば」と思い立ったように、離れた場所にいるきりたんの方を向きました。
バーサーカーずん子は何度か和歌を見つめてニヤニヤしていましたが、「そういえば」と思い立ったように、離れた場所にいるきりたんの方を向きました。
ねえねえ、きりたん( *´艸`)(ウフフ
前から思ってたんだけど、きりたんって、「秋田美人」だよねえ(*'ω'*)
前から思ってたんだけど、きりたんって、「秋田美人」だよねえ(*'ω'*)
――は、はひ! そ、そうでしょうか? 自分では自覚がないのですが……。
急に話を振られて、騒ぎが収まるまで、ツッコミ役として関係のない場所から高みの見物をしようとしていたきりたんの背筋が凍ります。
普段の優しいずん子によく褒めてもらえる言葉――「秋田美人」。ですが、今の彼女の笑顔は、どこか悪魔のそれに似て見えるのです。
普段の優しいずん子によく褒めてもらえる言葉――「秋田美人」。ですが、今の彼女の笑顔は、どこか悪魔のそれに似て見えるのです。
肌も真っ白で、羨ましいよねえ……(`・ω・´)キリッ まるで「おもち」のようだねえ……。
――ひっ……!
そういうお肌のこと、“もち肌”って言うらしいねえ……(・∀・)
滅多に表情を崩さないはずのきりたんの顔中から、さっと、血の気が失せていきます。
ずん子本人としては優しく語りかけているようなのですが、どうも今の彼女は、きりたんにとって禍々しい存在として映るのです。
ずん子本人としては優しく語りかけているようなのですが、どうも今の彼女は、きりたんにとって禍々しい存在として映るのです。
――ね、ねえさま……? まさか……!?
自分に向けられた矢尻のずんだを見て、きりたんの身体が硬直します。
もちろん、人体に当たっても傷がつかないタイプの矢ではあります。ずん子はそこまで力が強くありませんから、矢がぶつかった衝撃も大したことがないでしょう。――それでも。
もちろん、人体に当たっても傷がつかないタイプの矢ではあります。ずん子はそこまで力が強くありませんから、矢がぶつかった衝撃も大したことがないでしょう。――それでも。
“ずんだもち肌ァ”!!!(`・ω・´)キリッ
――あっ……あうあう……!
――恐らく、バーサーカーモードの裏にいるずん子の最後の抵抗だったのでしょう。
優しく、あくまで優しく。水鉄砲でじゃれる子どもたちのように放たれた矢は、しかし、しっかりときりたんの肌を捉えていました。
優しく、あくまで優しく。水鉄砲でじゃれる子どもたちのように放たれた矢は、しかし、しっかりときりたんの肌を捉えていました。
……きりちゃん! 伏せて!
――イタコねえさま!?
ゆるゆると飛んでくる矢。それに立ちふさがるように、咄嗟に彼女を庇ったのは、イタコ姉さまでした。
べちゃっと、露出の少ない彼女の肌にずんだがヒットします。
べちゃっと、露出の少ない彼女の肌にずんだがヒットします。
肌に当たったずんだは黒く光り始め、魔王復活のような、どす黒いオーラを四方に振りまきながら、イタコ姉さまにまとわりついていきました。
当然、イタコ姉さまは大慌てです。
当然、イタコ姉さまは大慌てです。
ちゅっ……なんですのこれ!?∑(゚ω゚ノ)ノ 色が! お肌の色が!
きゃあああぁぁぁぁぁあああっ!?。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
肌がヨ○ダとかピッ○ロさんの色に!? うわ、うわ、なんですのおおぉぉぉぉ!?
きゃあああぁぁぁぁぁあああっ!?。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
肌がヨ○ダとかピッ○ロさんの色に!? うわ、うわ、なんですのおおぉぉぉぉ!?
変化は一瞬で完了しました。黒いオーラがイタコ姉さまの周りから解けると、中から現れたのは、かつての美貌など見る影もない――いえ、目鼻立ちは整っているのですから、それは言い過ぎかもしれませんが――緑色のお姉さま。
こ……これが“ずんだもち肌”……。あ、あたし19なのに……きりちゃんと同じく、もち肌だったんですわ……。
やだ、ちょっと嬉しい…………orz(ガクゥ
やだ、ちょっと嬉しい…………orz(ガクゥ
肌が黄緑色になってしまったショックと、自分の肌がまだ「もち肌」に相応しいという喜びという、二つのせめぎ合う感情に振り回され、イタコ姉さまはへたり込みます。
――そんな彼女には目もくれず、ずん子は再びきりたんを狙っていました。
――そんな彼女には目もくれず、ずん子は再びきりたんを狙っていました。
じりじりと追い詰められて、後退していくきりたん。やがて壁に小さな背中がついてしまい、逃げ場がなくなってしまいます。
もはやずんねえさまを説得するしかない。そう決意したきりたんは、小さな声をできるだけ張り上げて、おずおずと口を開きました。
もはやずんねえさまを説得するしかない。そう決意したきりたんは、小さな声をできるだけ張り上げて、おずおずと口を開きました。
――ずんねえさま、思い出してください。あの優しかったねえさまを。わたしの言葉を忘れずに、ホタルイカを使った料理を作ってくれたねえさまを。わたし、楽しみなんです。ホタルイカは食べられなかったけれど、ねえさまと一緒にホタルを見に行きます。見に行きたいです。
――ずんねえさま……本当のずんねえさまは、どこへ行ってしまわれたのですか。ずんだを愛し、それと同じくらい人間を愛している、あのずんねえさまは……。
き……きりたん……?
うっ……頭が……(゚´ω`゚)
うっ……頭が……(゚´ω`゚)
きりたんの言葉が通じたのでしょうか。ずん子は突然頭を押さえて、片膝をつきます。バーサーカーずん子が、ダメージを受けているのです。
自分の言葉が通じた。そのことを知ったきりたんは、いまが好機とばかりに、まくし立てます。
自分の言葉が通じた。そのことを知ったきりたんは、いまが好機とばかりに、まくし立てます。
――そもそも、ねえさま? ねえさまは『ずんだ』全てを愛しているはずでしょう? ずんだはお餅だけではありません。ずんだ汁も、ずんだアイスも、あるんです。
――すべての「もち」をずんだ餅に変えてしまったら、他のずんだ料理たちはどうなるのですか? ずんだ餅の影に隠れて、ずんだ料理とは認められなくなってしまうかもしれません。
ねえさまが愛情こめて作った、数々の創作料理たちもです!
ねえさまが愛情こめて作った、数々の創作料理たちもです!
……っ!?(´゚д゚`)
ずんだのために行ってきた行為が、かえってずんだの首を絞めていた。
知りたくなかった事実を突きつけられて、ぐらりと、ずん子の身体が傾きます。
知りたくなかった事実を突きつけられて、ぐらりと、ずん子の身体が傾きます。
今こそ、暴走してしまったずん子のずんだ愛を落ち着けるチャンス。
頭を抱え、短い呼吸を繰り返す目の前のずん子に向かって、きりたんは、トドメとばかりに言い放ちました。
頭を抱え、短い呼吸を繰り返す目の前のずん子に向かって、きりたんは、トドメとばかりに言い放ちました。
――わたしは、ずんだを愛するねえさまが、ずんだを使った料理なら分け隔てなく愛するねえさまが好きなのです。
……き、きり……た……?
――ですが、いまのねえさまはただの修羅。ずんだの心を忘れ、ずんだを愛する心を忘れた一匹の鬼です。
――戻ってきてください。わたしのずんねえさま!
きりたん……(ノ∀;`)
――ねえさま……。おかえりなさい……。
ごめんね、きりたん。私が間違ってたよ……( ;∀;) 世界はずんだ餅だけじゃない。ずんだはもっともっと、色んな可能性にあふれてる!(`・ω・´)ってことだね!
――ねえさま。分かってくれればいいんです。
――さて、この事態の収拾を付けないといけないですね。
うふふふふふふ……ふふっ。
うふふふふふふ……ふふっ。
……きりたん? なんか目が怖……ひゃ!?∑(゚◇゚ノ)ノ
今だァ!(ガバッ
感動の再会。しんみりとBGMが流れ、姉妹は涙を流しながら抱き合ってハッピーエンド!
そう思って油断したずん子を、後ろからイタコ姉さまが羽交い締めにします。顔まで緑色なものですから、彼女の鬼気は並大抵ではありません。
感動の再会の場は、あっという間に、再び修羅場へと変化しました。
そう思って油断したずん子を、後ろからイタコ姉さまが羽交い締めにします。顔まで緑色なものですから、彼女の鬼気は並大抵ではありません。
感動の再会の場は、あっという間に、再び修羅場へと変化しました。
ぐっ……グアァァア!!?? イ……イタコ姉さま!? なにを……。
――ふふふふふ……。ねえさまにおしおき……。
右手、そして左手。亀のように身を屈め、四つん這いになったきりたんの背中にある二門の「きりたん砲」が陽光を受けて、鈍く輝きます。弾丸は味噌、砲身はきりたんぽ。彼女の成長と共に育ってきたこの武装は、紛うことなき、彼女の身体の一部です。
きりたんは両膝をついて、両手の平をコンクリートに接地。足裏を背中側の壁にくっつけて身を支え、その巨大な砲門を、羽交い締めにされているずん子へと向けました。
ちょっ! きりたん! 私もう正気だから! もうこんなことしないから!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
それに……そのまま撃ったら、私だけじゃなく姉さままで!
それに……そのまま撃ったら、私だけじゃなく姉さままで!
涙ながらに懇願し、身を捩るずん子でしたが――。まるで「ずんだ」をむりやり挿入された言葉たちの霊が力を貸しているかのように、イタコ姉さまは動きません。
ピッ○ロ大魔王のようなずんだ色の肌になってしまった彼女は、ずん子の肩越しに、きりたんとアイコンタクトを交わし――。
ピッ○ロ大魔王のようなずんだ色の肌になってしまった彼女は、ずん子の肩越しに、きりたんとアイコンタクトを交わし――。
撃ちなさい、きりちゃん! あたしごと撃ってぇ!ヽ(`Д´)ノ
大丈夫! あたし霊体みたいなもんだから!
大丈夫! あたし霊体みたいなもんだから!
――そういえば、最近読んだマンガでは撃つのは緑色の肌の人の方だったなあ、と思い浮かべながら、きりたんは全身に力を籠めました。
「きりたん砲」が周囲の酸素を一斉に吸収し、モーターの駆動音のような低周波を打ち鳴らすと――二門の砲口から、香ばしい味噌の香りが充満してきます。
「きりたん砲」が周囲の酸素を一斉に吸収し、モーターの駆動音のような低周波を打ち鳴らすと――二門の砲口から、香ばしい味噌の香りが充満してきます。
――またせたな……。かくごはいいか……。
やれ――――――っ!ヽ(`Д´)ノ
ま、待て――――――っ!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。
――それは、まるで二つの彗星のようでした。
きりたんぽの穴から打ち出された二つの味噌の塊は、特有の香ばしい香りを尾のように残しながら、一直線にずん子へと向かっていきます。
きりたんぽの穴から打ち出された二つの味噌の塊は、特有の香ばしい香りを尾のように残しながら、一直線にずん子へと向かっていきます。
反動で、きりたんの華奢な身体は壁に叩き付けられます。彼女はまだ発展途上、コントロールがうまくできないのです。背中をしたたかに打ち付けたはずのきりたんは、なぜかをやり遂げたような、恍惚とした表情をしていましたが。
さて、その一方、味噌の弾が向かった二人の方は――。
さて、その一方、味噌の弾が向かった二人の方は――。
ちゅっ、ちゅあああああぁぁぁぁぁぁっ!?。・ ゚・。* 。 +゚。・。* ゚ + 。・゚・(ノД`)
きゃあああああぁぁぁぁぁっ!。・ ゚・。* 。 +゚。・。* ゚ + 。・゚・(ノД`)
――味噌。それは、万能調味料。
生の野菜につけても、味噌汁にしても、ラーメンのスープにしても――あらゆる食べ物の味を整えて、「あるべき味」に戻してくれます。
生の野菜につけても、味噌汁にしても、ラーメンのスープにしても――あらゆる食べ物の味を整えて、「あるべき味」に戻してくれます。
被弾したずん子たちも、みるみるうちにその力の支配下に置かれました。イタコ姉さまの肌は白磁のようなもち肌に戻り、「ズンダモチーフ」は「モチーフ」に戻り、「気ずんだ持ち」は「気持ち」に戻ります。
この分でしたら、大伴家ずんだ持氏の名前も、元通りに戻っていることでしょう。
この分でしたら、大伴家ずんだ持氏の名前も、元通りに戻っていることでしょう。
こうして――ずん子のずんだ愛が暴走したゆえに起こった混乱は、無事収束しました。
――世界に、平和が戻ったのです。
――数日後。朝。
できましたーヽ(≧▽≦)ノ!!ずん子特製、ずんだ創作料理第749弾!! 今度の料理は、味噌のずんだ和えでーす!!
……あれ?(。・Д・。) どうしたの、二人とも?
――ずんねえさま。コレを見てください。今朝の新聞なんですけど。
そう言って、ジト目のきりたんが新聞を差し出してきます。
そこには、『道長のあの句に新解釈!? 「この世をば わが世とぞおもふ ずんだもち月の 欠けたることぞ なしと思へばにゃあ」』という見出しが、デカデカと書かれていました。
そこには、『道長のあの句に新解釈!? 「この世をば わが世とぞおもふ ずんだもち月の 欠けたることぞ なしと思へばにゃあ」』という見出しが、デカデカと書かれていました。
……あ、あはははは……(*ノェノ)
そうです。道長さんだけは、ずんだアローの不思議な力によって無理矢理変えたのではなくて――彼に直接降臨してもらって、詠み直してもらったのでした。
だから、もらった和紙を証拠として提出すれば、歴史を書き直すことだって可能かもしれません。
そして、この事件の犯人は――。
だから、もらった和紙を証拠として提出すれば、歴史を書き直すことだって可能かもしれません。
そして、この事件の犯人は――。
――「ずんだもち月」はずんねえさま、語尾についてる「にゃあ」を消さなかったのは、タコねえさまですね……!?
……ちゅ∑(・ω・;ノ)ノ!!? あ、あたしは国会図書館なんて行ってないですわ!?
……あ。
……あ。
――はぁ……。撃ちます。撃てば元に戻るでしょう。
ねえさまがた、そこに並んでください。おあつらえ向きに、砲門は二つあるんですから(ニッコリ
ねえさまがた、そこに並んでください。おあつらえ向きに、砲門は二つあるんですから(ニッコリ
がっしょんがっしょん。
額に青筋を浮かべているきりたんでしたが、その表情はどこか嬉しそうです。きりたん砲をてらいなくぶっ放せることのストレス解消効果か、あるいは――おしおきそのものが、楽しみなのか。
額に青筋を浮かべているきりたんでしたが、その表情はどこか嬉しそうです。きりたん砲をてらいなくぶっ放せることのストレス解消効果か、あるいは――おしおきそのものが、楽しみなのか。
ご……ごめんなさああああああぁぁぁっぁぁぁい!。・ ゚・。* 。 +゚。・。* ゚ + 。・゚・・゚・(゚うェ´゚)・゚・
その後、反動であらぬ方向へと、しかもすごい満足そうな表情で吹っ飛んでいったきりたんを探し出すのに丸一日かかる羽目になりましたが――それはまた、別のお話。
――おわり――
次回はこちら http://inove.jp/ivsid1397


