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くれないの空 第1回

吸血鬼が主人公の長編です。

タグ:くれないの空

ト書き
「彼」と「彼女」の出会い。

それはこんな血のような色の夕暮れの街角。

まさに、黄昏時。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
はっ?!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
……。
月読アイ
おや、ひとが来た? 

結界を張ってあったのに妙なことだ。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
え……ちょっ……あなた、そのひとになにを?!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
……。
月読アイ
ご覧のとおり、白木の杭で、ビルの壁面に手足を張りつけにしておる。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
し……死ぬじゃないっ?! そんな酷いことを!
月読アイ
はっはっは、コイツが?

この程度でコイツが死ぬものかよ。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
馬鹿を言って! 警察を! 警察をケータイで呼びます!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
……。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
え? アンテナはちゃんと三本立ってるのに……うんともすんとも?
月読アイ
それが私の結界の効能さ。

本来なら人間がこの袋小路に入り込むこともないはずだったが。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
結界ってそんなオカルトじみた!
月読アイ
運がいいのか悪いのか。

お嬢ちゃん、あなたは今、まさにオカルトの世界に足を踏み入れたのさ。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
ふ、ふざけてないで、そんな、小学生の子供みたいカッコして!
月読アイ
外見はな。実は私の年齢が100を超えていると言ったら信じるかね?
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
馬鹿らしい。
月読アイ
ま、それは嘘だがな。

が、この場を目撃したお嬢ちゃんのその生命はもらう。

これはマジで。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
ちょっ、なに変な銃みたいなの向けてるのよ!

やめなさい!
月読アイ
これは杭打ち機……パイルバンカーだ。

元々、対人用の武器ではないが、なにひとも充分に殺せる。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
まさか、それであのひとも?!
月読アイ
察しがいい。観察力がある。

そんな聡明なお嬢さんを殺すのは忍びないが……うふふっ!
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
ちょっ……ええ?! ふざ、ふざけてるんでしょ?!
月読アイ
生憎、私はふざけて「殺す」と言うほど、ひとの命を軽んじてはいない。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
あ、ああ……!!
月読アイ
主の御下に逝くがいい……。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
あ、あ、あのひとがっ!!
月読アイ
!!!

ぬうっ!
ドラゴン
GURHHHHYY!
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
いきなり! 変なケダモノに変身した……?!
月読アイ
ちいっ! 「黒犬」へと変じたか!

危うく背後からの一撃でやられるところだった。
奥 神楽(大垣きゅん物語)
……。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
あ……ひとの姿に戻った……!
月読アイ
やはり「くれない」!

やられたふりをしていただけか!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
……お前たちへの頼み事、通った試しがないな。
月読アイ
なにを。
奥 神楽(大垣きゅん物語)
それでも頼もう。

そこの少女、見逃してやってくれないだろうか。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
え……?
月読アイ
ふん、さすがに名うての女好きだな。

問い返すが、それではお前も困るのではないか?

自分の存在が周囲に知られては。
奥 神楽(大垣きゅん物語)
……いつものことだ。
月読アイ
ほう、大した覚悟。

しかし我らが「十字聖教団」。

主の教えに背く汚れたバケモノの言葉に耳を貸すとでも?
奥 神楽(大垣きゅん物語)
……本当に変わらないな、お前たちは。
月読アイ
普遍的と言え。

もらった! 女の命!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
むっ?!
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
ひっ!

……あ、あんな場所から一瞬で?
奥 神楽(大垣きゅん物語)
ぐ……! くうっ!
月読アイ
女をかばって自ら杭に打ち貫かれたか。

ふふっ、計算通りよ。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
ちょっと、しっかり……!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
く……平気だ。

それより逃げろ。僕があいつを引きつけておく。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
それじゃあなたが!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
いい。

こういうのは慣れている。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
え?
奥 神楽(大垣きゅん物語)
逃げてくれないと、僕も本気を出せない。

頼む。
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
う、うん……。
月読アイ
睦言は終わったかね?

こっちの準備は終わったぞ?!

主の御下においていでよ、「天使」! 

その名、「黒王(こくおう)」!
魔王(男)
……。
奥 神楽(大垣きゅん物語)
「神の眷属」を呼び出したか。

君、早く!
大垣 ゆん(大垣きゅん物語)
は、はい!
月読アイ
ここで逃してはあとで大主教から大目玉なのでな。

いけ! 捕らえろ、「黒王」!
魔王(男)
……。
奥 神楽(大垣きゅん物語)
それは駄目だ。
魔王(男)
どけ。「神の眷属」の成り損ないが。
奥 神楽(大垣きゅん物語)
黙れ、犬め。
魔王(男)
ふ……!

この地を闇の底へと墜としてやる。
奥 神楽(大垣きゅん物語)
闇は僕の領地だ。
魔王(男)
「黒沼」!

なにものも昏迷の闇より逃げられぬ!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
あっは! 愚か!
魔王(男)
ぐわあっ! 我の首筋を……正確に!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
「黒王」とやら、闇の主が誰か、思い知るがいい。
魔王(男)
黙れ! 「吸血鬼」風情が!
奥 神楽(大垣きゅん物語)
闇の恐怖、教えてやるよ。
ト書き
続く。
ト書き
この作品のイメージ元になった歌です。
「Bite Hard」
https://www.youtube.com/watch?v=vHh0r-1L9eI