ホラー

駅前のタクシー

乗ったらどうなるんでしょうね・・・。
トロール
まぁ、人から聞いた話なんだけど。
大阪の郊外、京都との県境に近いとある新興住宅地最寄り駅での話。
ゴーゴン
ちょっとちょっと!
トロール
何だよ?
ゴーゴン
挨拶無しに何話し出してんのよ!?
トロール
しょーがないだろ、作者が何も言わないんだから。
ゴーゴン
あーそうか、「挨拶は次までに考えとく」とか言ってたっけ。
トロール
そう。
何も言って来ないなら挨拶は抜きだ。
ゴーゴン
OK、続けて。
トロール
でな、何せ山を切り開いて作ったような住宅地だから、基本的にはメインの道路は全て坂道な訳だ。
自転車で駅まで行こうものなら行きは一度もペダルを踏まず、帰りも一度もペダルを踏まない、なんて冗談みたいな話が出る位。
ゴーゴン
・・・意味がわかんないんだけど?
トロール
つまり。
行きは下り坂だから何もしなくても勝手に自転車が進んでくれる。
帰りは疲れている所に上り坂をヒィヒィ言いながらペダルを踏むなんてやりたくない、だから自転車を押しながら歩いて帰る。
で、一度もペダルを踏まない、という訳だ。
まぁ、駅の近くは結構平坦だから、大袈裟に言ってるだけなんだろうけどね。
ゴーゴン
な、なるほど・・・。
トロール
でもまぁ、結構規模が大きい所だから、駅から遠い人はバスで駅まで行くんだな。
行きはいいけど問題は帰り。
バスって夜は終わるのが早いだろ?
終電が近くなる頃には、もうバスは動いてない。
そうなると、家族の出迎えが期待出来ない人はタクシーに乗るしか無くなる訳だ。
ゴーゴン
なるほど、それはそうよね。
トロール
で、このお話の主人公、仮に、Sさん、としておきましょうかね?
このSさん、つい最近、この新興住宅地に引っ越してきたばかりだった。
それまではそんなに遅くなる事も無くて、帰りのバスにも乗れていたんですが、その日は会社の飲み会があって、つい帰りが遅くなっちゃった。
ゴーゴン
なんで稲川口調になっちゃってるのよ?
トロール
あ、バレたか。
まぁとにかく、自分が降りる最寄り駅に着いたのが、終電の一本前。
奥さんは車の免許を持ってないから、迎えに来てもらうのは不可能だったんだ。
仕方なく「タクシーに乗るかな」と思いつつ改札口に向かうと、どうした事か周囲の人たちは改札を出た途端猛ダッシュで走り去ってしまったんだな。
「え?え?な、何?何なんだ?」
とか思いつつ歩いてタクシー乗り場に行って、目が点になった。
ゴーゴン
どうして?
トロール
タクシー乗り場は長蛇の列が出来ていた。
何せ、いくら大規模とは言っても所詮は新興住宅地。
深夜料金とはいえ、稼ぎも多寡が知れてる、ってもんだから来てるタクシーの台数が少ないんだな。
時々1台来たと思ったら、またしばらく待ってやっと次の1台、って調子。
タクシー待ちの列はじわりじわりとしか進まない。
そこに、京都や大阪からの最終電車が到着して、列はさらに長くなる。
もう覚悟を決めて、タクシーが来るのを待つしかなかった訳だ。
ゴーゴン
うあー、悲惨よねぇ。
深夜もバスを動かせばいいのに。
トロール
まぁ、ねぇ。
でも、運転手の確保も大変だろうし、何よりバスってのはうるさいから、安眠妨害だ、って怒る人も出るだろうし、難しいんじゃないかな。
ゴーゴン
うーん・・・。
トロール
まぁとにかく、Sさんはぼんやりと来ては去るタクシーを見送り続けていた訳だ。
けど、ふと、すぐ横のバス停の奥に、1台の車が止まっている事に気が付いた。

「あれ?アイツあんな所で何してんだ?」
ゴーゴン
何だったの、その車?
トロール
客待ちのタクシー。
古い型の車に、少々時代遅れな感のある提灯みたいな形のアンドン(屋根の空車灯ね)を光らせて、じっと止まっている。
運転席にも人影が見えるし、エンジンもかけっぱなしの様子。
ゴーゴン
休憩でもしてたの?
乗せてくれたらいいのにね?
トロール
当然Sさんもそう思ったんだろうな。
つい、「何やってんねんアイツ、さっさと来て客乗せろや」と声に出してしまった。
すると・・・。
ゴーゴン
すると?
トロール
自分の前に並んでいた初老の男性が急に振り向いてこう言った。

「兄ちゃん、あのタクシー見えるんか?」

Sさんもちょっと驚いたけど「え、ええ、見えてますよ。さっさと働けっちゅうに」と応じた。
するとその男性、続けて妙な事を言いだした。
ゴーゴン
何って?
トロール
「そうか、見えるんか。ええか兄ちゃん、あのタクシーは無視せなあかん。絶対に乗ったらあかんで」
ゴーゴン
・・・?
って、ちょっと待って。
それってもしかして・・・。
トロール
そう、そのタクシー、車も含めて幽霊なんだってさ。
ゴーゴン
タクシーの幽霊!?
トロール
そう。
その新興住宅地で、最初に入居が始まった頃の話なんだけど、深夜にタクシー強盗があって運転手さんが惨殺される、っていう事件があったらしいんだ。
これ、後から調べたら実際にそういう事件がその近辺で起きていたらしい。
ゴーゴン
うわぁ・・・。
トロール
恐ろしい事に、事件そのものは迷宮入りで犯人は未だに捕まっていない。
で、その殺されたタクシーの運転手が犯人を捜したくて、自分が殺された時間に近くなるとそのバス停に出没する、っていう噂が実際にあるんだって。
ゴーゴン
噂どころか、実際に居る訳だ・・・。
トロール
もっと恐ろしいのは、実際に乗った人がいる、っていう噂がある。
ゴーゴン
・・・幽霊のタクシーに?
トロール
うん。
ゴーゴン
・・・で、その人は?
トロール
行方不明。
ゴーゴン
マジで!?
トロール
あくまでも噂だからね、噂。
ゴーゴン
・・・でも、シャレになんないわねぇ。
トロール
案外、普段も知らずに幽霊のタクシーに乗ってたりしてな。
ゴーゴン
やめてよ、タクシーに乗れなくなっちゃうじゃない!
トロール
うん、だから俺、タクシー乗らないし。
ゴーゴン
・・・。