りんごのやま
先日長野に日帰りで行ってきたんですが、丁度その日あの地震が起きました。幸いその時間には既に自宅まで戻ってきてましたけど、もし向こうで車内泊してたらと思うとぞっとしますね。
あのー、マキさん?
ん、なぁにゆかりん
あの、なんですかこれ
何って、りんごだけど?
英語で言うとアッポーですね
いや、それくらいは分かりますよ
問題は、なんでこんなたくさんあるのかってことですよ
えーっとね、これには深い事情があって・・・
深くなかったらその胸えぐり取りますからね
今日やけに風当たり強くない?
いいからさっさと事情とやらを話してくださいよ
あ、うんそうだね
わたしのお父さん、まぁ知ってのとおり出張ばっかりなんだけど
今回は長野に行ったらしくて、お土産でたくさんりんご買ったのよ
たくさんにもほどがあるでしょう
うんわたしもそう思った
わたしの家にもこの2,3倍くらいりんごあってね
逆にそれどうやって持って帰ってきたんですか
車いっぱいに積んできたと思ったら郵送でも届いたよ
マキさんのお父さんてそんなにりんご好きなんですか?
いや、あんまり甘い物自体それほど好き好んで食べるタイプじゃないけど・・・
まぁ、そんなこんなで二人におすそ分けしろってさ
今思ったんですけど、よくマキさんここまでこの量のりんご持って来れましたね
うん、滅茶苦茶頑張った
これで受け取ってもらえないと帰りも頑張る羽目になる
それはそれで面白いですね
とはいえもらえるのでしたら遠慮なくいただきますけど
いいんでしょうか、こんなにたくさん・・・
うん、実はあんまり身内疑いたくはないんだけどさ、お父さんがこれ持っていく前にこの箱漁っててさ
なんか怪しいなーって思ったんだよ、聞いても答えてくれないし
こ、これは・・・
林檎の中に媚薬をしこんでさぁ大変!わたしやゆかりさんがあんなことやこんなことになってしまう!なんて展開に・・・!?
ないですね
流石にそれはないよ
でも、本当になんか挙動不審な感じだったから、念のため言っておくけど気を付けてね?
かつて前科どころか未遂の一つもないのにここまで疑われる人がいたのでしょうか
相手がオッサンってだけで大変なこと言いまくってますもんね
じゃ、そろそろわたしは帰るよ、このあとも仕事あるし
はい、大荷物お疲れ様でした
いってらっしゃいでーす
・・・さて、どうしましょうか
中に何か仕込んであるんでしたっけ?
もしくはこの箱の林檎すべてにキスしてあるとか
考えただけで背筋がゾワッとしたんですけど
冗談ですよ冗談
えーっと確か・・・ああこれですこれ
?・・・なんですかこれ
くぼみのところに・・・マジック?
あ、これだけ作り物のりんごなんですね
はい、そうですよ
さっきマキさんが持ってきて中身を見たとき、奥にちょこっとだけ艶の違うものが見えたので、もしかしたらと思ったんですが
まぁ、何かありますよね
触ってみると中が空洞になってるのがよくわかりますね
確認してみましょう
どれどれ・・・
これは・・・手紙?
『どうも、結月さん、東北さん。マキがいつもお世話になってると聞いて、日ごろの感謝の意をこめてりんごを送ることにしました。住所が分からずマキに持っていくよう頼みましたが、マキはきちんと運んでくれたでしょうか。向こうの農家さんの押しに負けてちょっと多く買いすぎてしまいました。甘いものが好きでしたら幸いです。
最近、出張から帰ってマキから聞く話は君たち二人の話ばかりです。あまり家にいられず、マキを一人にすることが多いですが、君たちと知り合ってからのマキは家でもとても元気です。
私はマキのそばに長く居続けることはできませんが、君たちはどうかマキのそばにいてあげてください。』
最近、出張から帰ってマキから聞く話は君たち二人の話ばかりです。あまり家にいられず、マキを一人にすることが多いですが、君たちと知り合ってからのマキは家でもとても元気です。
私はマキのそばに長く居続けることはできませんが、君たちはどうかマキのそばにいてあげてください。』
・・・やっぱり、マキさんのお父さんですね
年賀状でも見れば、住所なんてすぐわかるのに、抜けてますね
別れの挨拶でもないのに、妙にしみったれた文章ですね、全く・・・
ゆかりさん、りんごどうします?
ちゃちゃっと切って煮込んで、りんごパイでも作りましょう
マキさんのお父さんが次の出張に行く前に、届けてあげましょう
賛成です
あ、手伝いますよ
そうですか、じゃあ、よろしくおねがいします