七代目の受難
まぁ、信じる信じないは自由、って事でひとつ。
私は信じてません。
と言うより信じたくありません。
私は信じてません。
と言うより信じたくありません。
おっすおっす。
あらこんばんは。
どうしたの、緑色の顔して?
どうしたの、緑色の顔して?
いや、緑色なのは前からだから、ってもう言ったよね?
そんな事はいいんだよ。
突然だけど、呪いとか祟りとかって、信じるほう?
そんな事はいいんだよ。
突然だけど、呪いとか祟りとかって、信じるほう?
何をバカな事言ってんのよ?
そんなものある訳無いでしょ?
そんなものある訳無いでしょ?
まぁ普通、そうだよね。
いや、前に言ったっけ?
うちの家系が明治の前まで代々武士だった、って事。
いや、前に言ったっけ?
うちの家系が明治の前まで代々武士だった、って事。
初耳だけど?
あれ、そうだっけ?
まぁいいや。
明治維新で見事な位没落したけど、まぁ、江戸時代まではお城で奉行職を貰える程度には有力だったらしいのよ、ご先祖様は。
と言っても中国地方の田舎侍だけどね。
まぁいいや。
明治維新で見事な位没落したけど、まぁ、江戸時代まではお城で奉行職を貰える程度には有力だったらしいのよ、ご先祖様は。
と言っても中国地方の田舎侍だけどね。
へぇ、そうなんだ。
で、それがその呪いだの祟りだのとどう関係がある訳?
で、それがその呪いだの祟りだのとどう関係がある訳?
それなんだけどさ・・・。
俺には歳の離れた従弟が居てな。
そいつ、県の国立大学で民俗学を専攻してたんだけど、そのまま大学に居座って研究者になっちゃったんだよ。
で、研究の片手間に、図書館に保管してあった江戸時代の文献を適当に読み漁ってたらしいんだ。
俺には歳の離れた従弟が居てな。
そいつ、県の国立大学で民俗学を専攻してたんだけど、そのまま大学に居座って研究者になっちゃったんだよ。
で、研究の片手間に、図書館に保管してあった江戸時代の文献を適当に読み漁ってたらしいんだ。
で?
でな。
その文献の中に、俺らと同じ苗字の人物が時々出て来る事に気付いたんだと。
そいつの親、っつうか俺の叔父なんだけど、養子に出てるもんだから苗字が変わってるんだわ。
だから最初は気付かなかったけど、ふっと父親の旧姓を思い出してビックリしたんだと。
その文献の中に、俺らと同じ苗字の人物が時々出て来る事に気付いたんだと。
そいつの親、っつうか俺の叔父なんだけど、養子に出てるもんだから苗字が変わってるんだわ。
だから最初は気付かなかったけど、ふっと父親の旧姓を思い出してビックリしたんだと。
なんで驚いた訳?
その名前が出て来る人物ってのが、「介錯人」だったから、なんだ。
かいしゃくにん?
あ、知らないんだ?
アレだよ、昔の武士がなんかやらかして切腹する事になったりするだろ?
そんな時、武士が腹を切ったら首をスパッと刎ねる奴が後ろに居るだろ?
あの役目をやる人を介錯人、って言うんだ。
アレだよ、昔の武士がなんかやらかして切腹する事になったりするだろ?
そんな時、武士が腹を切ったら首をスパッと刎ねる奴が後ろに居るだろ?
あの役目をやる人を介錯人、って言うんだ。
随分と大雑把な説明ね?
うるさいよ。
で、それがどう驚くべき事実な訳?
そういうお役目だってあったんじゃないの、江戸時代なら?
そういうお役目だってあったんじゃないの、江戸時代なら?
まぁ、一度や二度ならね。
その従弟がもっと前の文献を読み漁って数えてみたら、結構な人数の首を刎ねてる事になっちゃうんだよ。
決定的だったのが、一覧表みたいなのが出て来たんだと。
その従弟がもっと前の文献を読み漁って数えてみたら、結構な人数の首を刎ねてる事になっちゃうんだよ。
決定的だったのが、一覧表みたいなのが出て来たんだと。
何の?
一覧表、って言うか、年表だな。
それも、腹を切った武士の。
「〇年〇月〇日、〇〇家の〇〇が切腹申し付けられたり、立会人は〇〇、〇〇、〇〇」って感じで、最後に「介錯人は〇〇馬之助なり」
ってぇのが、ずらーっと書き連ねられている奴。
なんか、親子代々引き継いでそんなモノを書いた物好きが居たらしいんだな。
それも、腹を切った武士の。
「〇年〇月〇日、〇〇家の〇〇が切腹申し付けられたり、立会人は〇〇、〇〇、〇〇」って感じで、最後に「介錯人は〇〇馬之助なり」
ってぇのが、ずらーっと書き連ねられている奴。
なんか、親子代々引き継いでそんなモノを書いた物好きが居たらしいんだな。
うへぇ・・・。
で、問題なのが「〇〇馬之助」な。
これが、20年近くにわたってほぼ毎回出て来る。
これが、20年近くにわたってほぼ毎回出て来る。
それがご先祖だ、と。
その時はまだ確定して無かったんだ。
ただ、本当に時々だけど「〇〇奉行の〇〇馬之助」って役職名まで書かれていた訳よ。
ただ、本当に時々だけど「〇〇奉行の〇〇馬之助」って役職名まで書かれていた訳よ。
それがご先祖だと確定されちゃった訳でしょ?
まぁ、そういう事。
どうやって?
過去帳だよ。
過去帳?
・・・あー、それで名前が一致した、と。
・・・あー、それで名前が一致した、と。
生きてた年代もね。
さらに、何の奉行職かもそこから判明しちゃった。
バッチリ一致している訳よ、そこら辺が。
さらに、何の奉行職かもそこから判明しちゃった。
バッチリ一致している訳よ、そこら辺が。
で、それがどういう具合に呪いだの祟りだのの話になるの?
それなんだけどさ・・・。
従弟の奴、見つけなくてもいい文献まで見つけちまったんだな。
従弟の奴、見つけなくてもいい文献まで見つけちまったんだな。
どんなのよ?
日記。
日記?
誰の?
誰の?
お城勤めをしてた下級武士の。
なんでも、馬之助が生きてた時代に、お城で、今で言う贈収賄事件があったらしいんだな。
なんでも、馬之助が生きてた時代に、お城で、今で言う贈収賄事件があったらしいんだな。
江戸時代なら当たり前じゃないの、そんなの?
それが、まぁ詳しい事は聞いてないんだけど、どうも見逃せないレベルの大事件だったらしいんだな。
それに関連して、10人位の武士が腹を切ってる。
それに関連して、10人位の武士が腹を切ってる。
10人!?
うん。
関わった商人の方も、斬首だの四方十里所払いだの、って結構重い刑罰を乱発していたみたいなんだな。
関わった商人の方も、斬首だの四方十里所払いだの、って結構重い刑罰を乱発していたみたいなんだな。
昔の刑罰って残酷だもんねぇ・・・。
でな。
問題なのがその腹を切った武士のうちの1人なんだよ。
どうも、冤罪だったらしいんだな、その人。
問題なのがその腹を切った武士のうちの1人なんだよ。
どうも、冤罪だったらしいんだな、その人。
冤罪?
うん。
別に何も悪い事はしてなかったのに、何かの間違いでそいつも収賄してた事にされちまったんだな。
で、切腹を申しつけられた、と。
別に何も悪い事はしてなかったのに、何かの間違いでそいつも収賄してた事にされちまったんだな。
で、切腹を申しつけられた、と。
あらら・・・。
でな、その日記ってヤツに、その人が切腹する時の様子が事細かに書かれていたんだと。
最後の最後まで「俺は違う、商人とは何の付き合いも無い」って訴えてたらしいんだな。
で、見るに見かねた上役が・・・。
最後の最後まで「俺は違う、商人とは何の付き合いも無い」って訴えてたらしいんだな。
で、見るに見かねた上役が・・・。
どうしたの?
「見苦しいにも程がある。お前が素直に腹を切れば後の事は安堵してやるが、いつまでもそのような事を申すなら、お家も取り潰されようぞ!」
的な事をバッっと言っちゃったらしいんだな。
的な事をバッっと言っちゃったらしいんだな。
酷い話ねぇ・・・。
残される家族まで酷い目に遭わせるぞ、って脅した訳ね。
残される家族まで酷い目に遭わせるぞ、って脅した訳ね。
まぁ、ねぇ・・・。
で、それでその人も腹を決めたらしく、まぁ、準備に取り掛かった訳だ。
で、それでその人も腹を決めたらしく、まぁ、準備に取り掛かった訳だ。
・・・。
でな、最後の最後、短刀を自分の腹に突き立てる瞬間に叫んだんだと。
何って?
「貴様ら全員よぉく覚えておれ! 貴様ら全員、七代先で御仕舞だ!」
うわぁ・・・。
で、その直後に見事なまでの切腹を遂げた、と。
言うまでも無いけど、介錯人は〇〇馬之助、だったんだとさ。
言うまでも無いけど、介錯人は〇〇馬之助、だったんだとさ。
ここでもご登場、な訳ね。
結構な凄腕だったらしいんだな、剣術の。
でもそれって、損な役回りなんじゃないの?
なんか、昔は首切りを稼業にしてるような人も居たんじゃ無かったっけ?
なんか、昔は首切りを稼業にしてるような人も居たんじゃ無かったっけ?
俺も噂程度で聞いた事はあるけど、そういう人達は処刑場なんかに勤めていたみたいだよ。
なんせ、相手は武士だからね。
それなりに格がある人でないと、務まらなかったんだろう。
あるいは、ご先祖様が首切り大好きな変人だったとか。
なんせ、相手は武士だからね。
それなりに格がある人でないと、務まらなかったんだろう。
あるいは、ご先祖様が首切り大好きな変人だったとか。
あー、なるほど、ご先祖からして変人だった訳ね・・・。
・・・なんか引っ掛かる言い方するね?
別に他意は無いわよ?
・・・。
まぁいいや。
で、問題なのはその後、なんだよ。
まぁいいや。
で、問題なのはその後、なんだよ。
ああそうか、七代目で何か大変な事が起こる訳よね、その冤罪で死んだ人の呪いだか祟りだかが本物だったら。
で、アンタの一族で、どの世代の人が七代目になるの?
で、アンタの一族で、どの世代の人が七代目になるの?
俺。
・・・はい?
俺らの世代が、七代目。
・・・マジで?
うん。
マジで。
マジで。
・・・で、何か起きちゃったりしてる訳?
起きてる、と言えば、起きてる。
・・・。
どんな、事が?
どんな、事が?
俺の親父の代、つまり六代目だな。
親父を入れて6人兄妹なんだよ。
で、1人が女性、つまり俺から見て叔母がいて、2人が養子に出てる。
で、俺の従兄弟ってのが、俺や兄弟も入れて12人いる訳なんだけど・・・、俺以外は全員結婚してる訳よ。
親父を入れて6人兄妹なんだよ。
で、1人が女性、つまり俺から見て叔母がいて、2人が養子に出てる。
で、俺の従兄弟ってのが、俺や兄弟も入れて12人いる訳なんだけど・・・、俺以外は全員結婚してる訳よ。
うん。
でな、叔母の所と養子に出た2人の叔父の所の従兄弟には、男の子が居るんだよ。
ん?
それってどういう意味・・・、あー、なるほど。
代々続いて来た家系からは外れちゃってるんだ、その人達は。
・・・って事は?
それってどういう意味・・・、あー、なるほど。
代々続いて来た家系からは外れちゃってるんだ、その人達は。
・・・って事は?
そう。
本家筋、っつうか俺の親父も含めた苗字がそのままな三人の所には、男の孫が居ないんだ。
今後も生まれる予定は無い。
本家筋、っつうか俺の親父も含めた苗字がそのままな三人の所には、男の孫が居ないんだ。
今後も生まれる予定は無い。
となると、そのうち、本家を継ぐ人が居なくなる、って事よね?
正解。
このままだと、俺達七代目でお家は御仕舞、って訳だ。
このままだと、俺達七代目でお家は御仕舞、って訳だ。
偶然でしょ、そんなの。
一刀両断にしやがったな。
いや、偶然だ、と言われたらそれまでなんだよね、確かに。
でも、余りにも出来過ぎてると思わないか、この偶然?
いや、偶然だ、と言われたらそれまでなんだよね、確かに。
でも、余りにも出来過ぎてると思わないか、この偶然?
んー、まぁ、そう言われるとねぇ・・・。
・・・あ!
・・・あ!
何だよ急に大声出したりして?
もしかしてアンタ、自分が結婚出来ないのも呪いだの祟りだののせいだ、って言いたいんじゃないでしょうね!?
違うわっ!
って言うかほっとけ!
って言うかほっとけ!