ホラー

七代目の受難

まぁ、信じる信じないは自由、って事でひとつ。
私は信じてません。
と言うより信じたくありません。
トロール
おっすおっす。
ゴーゴン
あらこんばんは。
どうしたの、緑色の顔して?
トロール
いや、緑色なのは前からだから、ってもう言ったよね?
そんな事はいいんだよ。
突然だけど、呪いとか祟りとかって、信じるほう?
ゴーゴン
何をバカな事言ってんのよ?
そんなものある訳無いでしょ?
トロール
まぁ普通、そうだよね。
いや、前に言ったっけ?
うちの家系が明治の前まで代々武士だった、って事。
ゴーゴン
初耳だけど?
トロール
あれ、そうだっけ?
まぁいいや。
明治維新で見事な位没落したけど、まぁ、江戸時代まではお城で奉行職を貰える程度には有力だったらしいのよ、ご先祖様は。
と言っても中国地方の田舎侍だけどね。
ゴーゴン
へぇ、そうなんだ。
で、それがその呪いだの祟りだのとどう関係がある訳?
トロール
それなんだけどさ・・・。
俺には歳の離れた従弟が居てな。
そいつ、県の国立大学で民俗学を専攻してたんだけど、そのまま大学に居座って研究者になっちゃったんだよ。
で、研究の片手間に、図書館に保管してあった江戸時代の文献を適当に読み漁ってたらしいんだ。
ゴーゴン
で?
トロール
でな。
その文献の中に、俺らと同じ苗字の人物が時々出て来る事に気付いたんだと。
そいつの親、っつうか俺の叔父なんだけど、養子に出てるもんだから苗字が変わってるんだわ。
だから最初は気付かなかったけど、ふっと父親の旧姓を思い出してビックリしたんだと。
ゴーゴン
なんで驚いた訳?
トロール
その名前が出て来る人物ってのが、「介錯人」だったから、なんだ。
ゴーゴン
かいしゃくにん?
トロール
あ、知らないんだ?
アレだよ、昔の武士がなんかやらかして切腹する事になったりするだろ?
そんな時、武士が腹を切ったら首をスパッと刎ねる奴が後ろに居るだろ?
あの役目をやる人を介錯人、って言うんだ。
ゴーゴン
随分と大雑把な説明ね?
トロール
うるさいよ。
ゴーゴン
で、それがどう驚くべき事実な訳?
そういうお役目だってあったんじゃないの、江戸時代なら?
トロール
まぁ、一度や二度ならね。
その従弟がもっと前の文献を読み漁って数えてみたら、結構な人数の首を刎ねてる事になっちゃうんだよ。
決定的だったのが、一覧表みたいなのが出て来たんだと。
ゴーゴン
何の?
トロール
一覧表、って言うか、年表だな。
それも、腹を切った武士の。
「〇年〇月〇日、〇〇家の〇〇が切腹申し付けられたり、立会人は〇〇、〇〇、〇〇」って感じで、最後に「介錯人は〇〇馬之助なり」
ってぇのが、ずらーっと書き連ねられている奴。
なんか、親子代々引き継いでそんなモノを書いた物好きが居たらしいんだな。
ゴーゴン
うへぇ・・・。
トロール
で、問題なのが「〇〇馬之助」な。
これが、20年近くにわたってほぼ毎回出て来る。
ゴーゴン
それがご先祖だ、と。
トロール
その時はまだ確定して無かったんだ。
ただ、本当に時々だけど「〇〇奉行の〇〇馬之助」って役職名まで書かれていた訳よ。
ゴーゴン
それがご先祖だと確定されちゃった訳でしょ?
トロール
まぁ、そういう事。
ゴーゴン
どうやって?
トロール
過去帳だよ。
ゴーゴン
過去帳?
・・・あー、それで名前が一致した、と。
トロール
生きてた年代もね。
さらに、何の奉行職かもそこから判明しちゃった。
バッチリ一致している訳よ、そこら辺が。
ゴーゴン
で、それがどういう具合に呪いだの祟りだのの話になるの?
トロール
それなんだけどさ・・・。
従弟の奴、見つけなくてもいい文献まで見つけちまったんだな。
ゴーゴン
どんなのよ?
トロール
日記。
ゴーゴン
日記?
誰の?
トロール
お城勤めをしてた下級武士の。
なんでも、馬之助が生きてた時代に、お城で、今で言う贈収賄事件があったらしいんだな。
ゴーゴン
江戸時代なら当たり前じゃないの、そんなの?
トロール
それが、まぁ詳しい事は聞いてないんだけど、どうも見逃せないレベルの大事件だったらしいんだな。
それに関連して、10人位の武士が腹を切ってる。
ゴーゴン
10人!?
トロール
うん。
関わった商人の方も、斬首だの四方十里所払いだの、って結構重い刑罰を乱発していたみたいなんだな。
ゴーゴン
昔の刑罰って残酷だもんねぇ・・・。
トロール
でな。
問題なのがその腹を切った武士のうちの1人なんだよ。
どうも、冤罪だったらしいんだな、その人。
ゴーゴン
冤罪?
トロール
うん。
別に何も悪い事はしてなかったのに、何かの間違いでそいつも収賄してた事にされちまったんだな。
で、切腹を申しつけられた、と。
ゴーゴン
あらら・・・。
トロール
でな、その日記ってヤツに、その人が切腹する時の様子が事細かに書かれていたんだと。
最後の最後まで「俺は違う、商人とは何の付き合いも無い」って訴えてたらしいんだな。
で、見るに見かねた上役が・・・。
ゴーゴン
どうしたの?
トロール
「見苦しいにも程がある。お前が素直に腹を切れば後の事は安堵してやるが、いつまでもそのような事を申すなら、お家も取り潰されようぞ!」
的な事をバッっと言っちゃったらしいんだな。
ゴーゴン
酷い話ねぇ・・・。
残される家族まで酷い目に遭わせるぞ、って脅した訳ね。
トロール
まぁ、ねぇ・・・。
で、それでその人も腹を決めたらしく、まぁ、準備に取り掛かった訳だ。
ゴーゴン
・・・。
トロール
でな、最後の最後、短刀を自分の腹に突き立てる瞬間に叫んだんだと。
ゴーゴン
何って?
トロール
「貴様ら全員よぉく覚えておれ! 貴様ら全員、七代先で御仕舞だ!」
ゴーゴン
うわぁ・・・。
トロール
で、その直後に見事なまでの切腹を遂げた、と。
言うまでも無いけど、介錯人は〇〇馬之助、だったんだとさ。
ゴーゴン
ここでもご登場、な訳ね。
トロール
結構な凄腕だったらしいんだな、剣術の。
ゴーゴン
でもそれって、損な役回りなんじゃないの?
なんか、昔は首切りを稼業にしてるような人も居たんじゃ無かったっけ?
トロール
俺も噂程度で聞いた事はあるけど、そういう人達は処刑場なんかに勤めていたみたいだよ。
なんせ、相手は武士だからね。
それなりに格がある人でないと、務まらなかったんだろう。
あるいは、ご先祖様が首切り大好きな変人だったとか。
ゴーゴン
あー、なるほど、ご先祖からして変人だった訳ね・・・。
トロール
・・・なんか引っ掛かる言い方するね?
ゴーゴン
別に他意は無いわよ?
トロール
・・・。
まぁいいや。
で、問題なのはその後、なんだよ。
ゴーゴン
ああそうか、七代目で何か大変な事が起こる訳よね、その冤罪で死んだ人の呪いだか祟りだかが本物だったら。
で、アンタの一族で、どの世代の人が七代目になるの?
トロール
俺。
ゴーゴン
・・・はい?
トロール
俺らの世代が、七代目。
ゴーゴン
・・・マジで?
トロール
うん。
マジで。
ゴーゴン
・・・で、何か起きちゃったりしてる訳?
トロール
起きてる、と言えば、起きてる。
ゴーゴン
・・・。
どんな、事が?
トロール
俺の親父の代、つまり六代目だな。
親父を入れて6人兄妹なんだよ。
で、1人が女性、つまり俺から見て叔母がいて、2人が養子に出てる。
で、俺の従兄弟ってのが、俺や兄弟も入れて12人いる訳なんだけど・・・、俺以外は全員結婚してる訳よ。
ゴーゴン
うん。
トロール
でな、叔母の所と養子に出た2人の叔父の所の従兄弟には、男の子が居るんだよ。
ゴーゴン
ん?
それってどういう意味・・・、あー、なるほど。
代々続いて来た家系からは外れちゃってるんだ、その人達は。
・・・って事は?
トロール
そう。
本家筋、っつうか俺の親父も含めた苗字がそのままな三人の所には、男の孫が居ないんだ。
今後も生まれる予定は無い。
ゴーゴン
となると、そのうち、本家を継ぐ人が居なくなる、って事よね?
トロール
正解。
このままだと、俺達七代目でお家は御仕舞、って訳だ。
ゴーゴン
偶然でしょ、そんなの。
トロール
一刀両断にしやがったな。
いや、偶然だ、と言われたらそれまでなんだよね、確かに。
でも、余りにも出来過ぎてると思わないか、この偶然?
ゴーゴン
んー、まぁ、そう言われるとねぇ・・・。
・・・あ!
トロール
何だよ急に大声出したりして?
ゴーゴン
もしかしてアンタ、自分が結婚出来ないのも呪いだの祟りだののせいだ、って言いたいんじゃないでしょうね!?
トロール
違うわっ!
って言うかほっとけ!