思わず【いいね!】と言ってしまいたくなる夏休みの自由研究
かつて、夏休みの宿題をこなすにあたって、最大の難関として君臨するのが「日記」や「勉強予定表」、そして「自由研究」に毎日書き込まなければならない「今日の天気」でした。「最後にまとめて宿題やればいいや」と思っていると、二ヶ月前の天気が分からなくて涙目に……という絶望感は、誰もが味わったことがあるはずです。そんなあなたも今日から安心! インターネットがあれば、その日、その時、自分のいる地域の天気はどうだったか、すぐに検索することができるのです!(※宿題は毎日コツコツやりましょうね)
(――一年前、八月末日・東北家居間――)
――扇風機の音が、こぢんまりとした和室に響き渡ります。夏の別れを告げるかのような夕焼けと、ツクツクボウシの蝉時雨の中、一つのちゃぶ台を挟んで、真剣な顔のずん子とイタコ姉さまが、正座して向かい合っていました。
ずんちゃん、分かっていますわね?(`・ω・´)
……来年から、あたしは社会人になりますわ。ですから、こういう夏休みも、最後になるかもしれません(`・ω・´)
……姉さま……(´・ω・`) そう考えると、少し、寂しいですね。
そうですわね……。ですが、これはもう決まったこと、すなわち、あたしとずんちゃんの運命ですわ。運命は避けられません。避けられないからこそ、あたしたちは努力をして、それを少しだけでもマシにしようとあがくのです(`・ω・´)
姉さまの言葉に、ずん子は気の利いた言葉を返すことが出来ません。二人の間に沈黙が流れ、再び、扇風機の音が部屋を支配します。真面目な顔のイタコ姉さまはそんな彼女を見て、固くなった場の雰囲気をほぐすように、くすりと笑いました。
……ずんちゃん、「約束」をしましょう、ですわ。来年も、再来年も、あたしたちが笑って夏を過ごせるように。
「約束」……。はい!(`・ω・´)
いい返事ですわね(*'∀`*)
イタコ姉さまはもう一度笑って、ちゃぶ台の中央に、右手の小指を突き出しました。彼女の意図を察したずん子も、それに応えるように、自分の小指を絡ませます。
――そして、姉さまは「約束」の中身を口にしたのでした。
(――時は戻って、今年の八月末日・東北家居間――)
あー……(´・д・`) ワレワレハズンダモチダー
夏の朝。お休みしてくれていた太陽が昇り始めると、空気があっという間に熱されます。八月暮日、ずん子は終わりつつある夏休みを懐かしみながら、扇風機に向かって喋っていました。
長く厳しい冬に備えるため、一般的に東北の学生の夏休みは短いのですが――全国から謎の力を持った少女が集まるずん子の高校は、八月末まで、お休みをもらえます。他の学生よりも一段と長い夏休みの影響もあいまって、油断しきった彼女の表情は、すっかり夏休みボケしてしまっていました。
ねえ、ずん子?
あー?(´・д・`)
ちゃぶ台の前には、暑そうな格好をしためたんが座っています。ずん子が扇風機を占領しているので、彼女の左手には、いつものドリル「ハイド」ではなく、うちわが握られていました。
『この財布であなたも開運! ~ボクがこんなにモテモテなんて、今までのボクは夢にも見ませんでした!~』と『1ヶ月で300万稼ぐ方法、これを読んだあなただけに教えます――ジャッジメントですの――』、どっちのタイトルにインパクトがあるかしら。
……なんか、「怪しい雑誌広告」対「うさんくさいWEB広告」の低次元な争いだねえ……(´・ω・`)
めたんは先週の花火大会での一件を、まだ根に持っているようです。
さっさと自由課題を終わらせて、最後の英語に取りかからないと……。いつも時間がかかるのよね、英語。英和辞書がわたくしの感性を理解してくれないのが悪いのよ。
( ゚д゚ )(シュクダイ?
(……まあ、そんな顔をするのも分かるわ……。ありえない量だものね)
めたんの横には、彼女が苦手としている英語の宿題が30センチもの高さに積まれています。あまりに非常識なその量を見て、ずん子の目が点になった……と、めたんは考えたのですが。
(あれ? でも、ずん子って同じクラスよね? なんで今さら驚いてるのかしら……)
……まさか、ずん子? ちょっとわたくしの言葉に耳を澄ましなさい。
……宿題(ボソッ
はぁん///(ビクッ
宿題。
……何が終わってないの?
そもそも、その存在を忘れてたというか……。夏休みって健全な学業を営むためのリフレッシュ期間なんだから、勉強しなければいけないのがおかしいというか……(。・´_`・。)
「よっと」というおばさんくさい掛け声とともに、きりたんがちゃぶ台に麦茶を三つ置きます。彼女の小脇にも、何冊かの宿題の本が抱えられていました。このちゃぶ台で、めたんと一緒に解き進めていくつもりのようです。
……で、でもでも、みんな今年の夏は私と一緒に色んなとこに遊びに行ったから、同じくらい進んでないはずだよね!? まだ間に合うってことだよね!?( ゚ω゚;)
……ふふっ。わたくしの家にはテレビもなければ携帯もないわ。当然、遊びに行くだけのお金もないし、そもそも壁と屋根もない。つまり――。
バカなぁっ!?工工エエェェ(*´Д`*)ェェエエ工工 そんな……そんなことで裏切られるなんて……。
ずん子の目には、めたんのドヤ顔がどう映っているのでしょうか。信じていた友人に裏切られて、彼女はガックリと肩を落とし……すぐに、顔を上げます。
じゃ、じゃあきりたんは!?(o'∀'人) きりたんって「あと五分経ったらやろう!」キャラじゃないの!?
――失礼な。わたしも終わってないですけど、あと少しですよ。今から本気を出せば終わります。
…………ナンデスト( ゚д゚ )
(これはこれでフラグのような気がするわね……。ずん子はテンパってて、気づく余裕がなさそうだけど)
めたんの指摘通り、ずん子はorzの格好になって落ち込んでしまいました。まるで、「マラソン大会、一緒にゴールまで走ろうね!」と約束していた友人が急にペースアップしたかのようです。
で、どうするの? 科目の宿題ならともかく、自由課題を今からやっても、絶対間に合わないわよ。
あ、自由課題ならすぐにできるよ。ほら、私って毎日「ずんだ作成日記」をつけてるから、それを提出すれば……ヾ(*'∀`*)ノ
――それ、何年連続ですか。確か小学生の時から同じものを提出し続けて、先生に怒られていたじゃないですか。
まあ、今となっては贅沢は言っていられないわね。自由課題はそれを出しちゃって、あとは科目の課題を『超速――フルブースト――』でクリアしてけば、なんとかなるんじゃない?
口を尖らせるずん子に向かって、めたんが現実的な妥協案を提示します。普通なら、普段のコツコツとした積み重ねが役に立った、と喜ぶはずですが――、ずん子は、何か心に引っかかるものを感じていました。
(そういえば、去年はイタコ姉さまに同じことを言われたなあ……(´・ω・`) 「まったく、しかたないですわね」って、宿題を手伝ってくれたんだっけ)
そんなことをぼけーっと考えていると、ずん子の耳に、部屋の空気を回転させる扇風機の音がひときわ大きく聞こえてきました。あの「約束」をした日も、同じ音が鳴っていたのです。
(――約束……。そうだ! 私は去年、イタコ姉さまと大事な約束をしたんだ……)
『来年からあたしは手伝えません。ですから、ずんちゃんは自分の力で、夏休みの宿題を終わらせてくださいね(o'∀'人)』
(す、すっかり忘れてた……( ゚ω゚;) でも、このままじゃダメだよね……)
ばん、とちゃぶ台に両手をついて、ずん子は決意に満ちた眼差しで立ち上がりました。きりたんが持ってきた麦茶がカタカタと揺れて、めたんときりたんを驚かせます。
私、自由課題も新しいことやるよ!(`・ω・´) やっぱり、毎年なんとなく提出するのは良くないと思う!
ちょ……正気!? 今から始めたんじゃ、絶対に間に合わないわよ!?
間に合わせるもん!(`・ω・´) 自由課題も新しいことやって、科目別の宿題も全部終わらせます! そう、約束のために!!! 守りたいから、私はやる!
――はあ……。
「うおおおおおおっ!」と叫び出しかねないずん子の背中には、真っ赤な炎の幻覚が燃えさかっています。彼女はその勢いで和室を飛び出すと、キッチン横の冷蔵庫からなにやら怪しい色の液体を3本持ってきて、ちゃぶ台に叩き付けました。
さあ!(`・ω・´) みんなで一緒に頑張ろう! 今日中に夏休みの宿題を終わらせるのだ!!! この、「ずんだブル」でエナジー注入!!
……ずんだブル!? 絶対アンタだけよ、こんなのでやる気が出るの!
――うわあ……。
いいからいいから!(´>∀<`)ゝ 騙されたと思って飲んでみてよ!
緑とも青ともつかない乳白色の液体が、叩き付けられた勢いでたぷたぷと揺れています。変な匂いはしませんが、いかんせん色が怪しすぎます。めたんがすかさず突っ込みましたが、きりたんは、こうなってしまったずん子が止まらないことを確信している様子です。
パシュッと開けて! 右手で缶を持ち! 左手は腰に! 顎を右側にクイッと向けて、背筋をぴんと伸ばし、そして一気に飲む!(ゴクッゴクッ
(――風呂上がりの牛乳じゃないんですから……)
……っかぁーっ!!(*´∀`*) うめぇ!! やる気が出てきたよ!!
プハー、とオッサンのような吐息を吐くずん子でしたが、なんと、みるみるうちにその顔の血色が良くなっていきます。心なしか目は血走り、頭の上から湯気のようなものがむわむわと立ち上り――彼女は勢いよく座り込むと、修羅のごとき勢いで宿題を始めました。
うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!(=ず・ω・だ=)ノ 解ける! 解けるぞ! この問題、ずんだゼミでやったのと同じ問題だッ!!(=ず・ω・だ=)ノ
――す、凄まじい効果ですね……。わたしも飲もうかな……。
そ、そうね……。これなら、今日中に英語を全部終わらせることだって……。
あまりの効果、そしてずん子の豹変ぶりに、きりたんとめたんも思わず唸ります。彼女らは一度お互いに目を見合わせて、こくりと頷くと――おずおずと、ずんだブルに手を伸ばしました。
ずん子に言われたとおり、風呂上がりの牛乳ポーズで一気に液体を流し込みます。はじめは目を固く瞑って飲んでいた二人でしたが、しばらくすると、その両眼がカッと見開かれるのでした。
(な……なによこれ……。のどごしが良くて……甘くて……いつまでも飲んでいられそう!!!!(=ず・ω・だ=)ノ(=ず・ω・だ=)ノ)
(――脳の芯がとろけるようなこの感覚……。舌に馴染んで離さないこのクリーミィな味わい……これは……(=ず・ω・だ=)ノ(=ず・ω・だ=)ノ)
――夏休みが、壮絶に、終わっていきます。
(――九時間後、東北家・玄関――)
ただいまですわー(o'∀'人)
19時過ぎ、イタコ姉さまが仕事から帰ってきました。夏休み中はまだまだ明るかったこの時間帯ですが、八月下旬にもなると、すっかり夜の帳に包まれています。
……あれ?(;゚∀゚) ただいまですわー!
返事がありません。玄関にはずん子、きりたん、めたんの靴がきちんと並べられて置いてあるのに、誰も出迎えに来ないのです。
いつもは賑やかな東北家の廊下は真っ暗で、どこからも物音がしません。「何かあったのか」と心配になりながら慎重に廊下を進むイタコ姉さまでしたが、廊下の突き当たりにある和室の居間に、灯りがついていることに気がつきました。
ずんちゃん? ここにいますの?(ガラッ
――それは、見るも無惨な光景でした。
転がっているずんだブルの缶にはもはや一滴の液体も残っておらず、山積みにされていたであろう教科書は崩壊し、ノートには眠気と戦いながら走らせた解読不能の文字が大量に並んでいます。タイマーを設定していた扇風機の風はいつの間にか途切れ、その中に、三つの抜け殻が転がっていました。
き……きりちゃん!? めたんさん!? ずんちゃん!?∑(゚ω゚ノ)ノ こ……これは……。
思わず、イタコ姉さまは倒れているずん子を抱き起こします。宿題との仁義なき戦いに敗れ去った彼女の瞳は虚ろで、目元には、激しい戦いを物語る刻印としてのクマが、鮮烈に浮かんでおりました。
ね、姉さま……。申し訳ありません……。ずん子はもうダメです……(´ω`;)
姉さま……、ごめんなさい……。やくそく、守れなかっ……。
ずん子の全身から、僅かに残っていた力が抜けます。彼女がゆっくりと目を閉じると、目元にありありと記されていたクマが、すうっと、消えてゆくのです。力尽きてしまった彼女の表情は、しかし、どこか幸せそうでした。
ずんちゃん……ありがとうですわ。あなたのことは忘れない、ですわ……(゚´ω`゚)
イタコ姉さまはずん子をそっと横たえて、一人、涙を拭いながら立ち上がりました。激しい戦闘の爪痕、散らかりきった和室、三人の抜け殻。扇風機の音すらなくなってしまった部屋に響くのは、夏の別れを惜しむかのような、虫の鳴声だけです。
この光景を二度と忘れまい、イタコ姉さまはそう心に決めて、一人ぽつんと佇む和室の中央で、こう、呟きました。
――世界よ、これが日本の夏休みだ!
――その後、結局徹夜で宿題を手伝ってもらったずん子は、来年こそと意気込んでイタコ姉さまと約束を交わしますが――それが守られたかどうかは、また別のお話。
――おわり―― (次週、新キャラが登場します! 新キャラの「彼女」のもとになっている地方と、モチーフをまとめのコメント欄で予想して当ててみてくださいね! お一人さま何度でも挑戦可能です! 当選者には「ずん子の秘密の画像」をプレゼント!)
次回はこちら http://inove.jp/ivsid1332

















