日本三大うどんは讃岐うどん(香川)、水沢うどん(群馬)、そして……
「うどん」といえばラーメンやカレーに次ぐ日本の国民食。細かな食べ方の違いも含めると、たくさんの種類が存在します。ちなみに市販の冷凍うどんや玉うどんは、茹でたあと、ざるにあげてから一旦冷水でしめ、ゆで汁を上からかけて再加熱するという一手間を加えるとおいしくいただけますよ!今日はそんなお話。
業務が終了したファミレスの厨房で、エプロン姿のしのびときりたんがにらみ合っています。二人の前には、山と積まれた小麦粉が。どうしてこんなことになったのか、少し振り返ってみましょう。
(――一時間前、ずん子・しのびのバイト先のファミレス――)
「最初のうちは連続でシフトに入って一気に慣れた方がいい」という方針に従い、今日もしのびは研修です。うどんを乗せたお盆のせいで両手が塞がっているずん子に代わって控室のドアノブに手をかけたしのびが、その鋭敏な感覚で何かを感じ取ったらしく、警戒して立ち止まりますが――。
――がちゃり、と、彼女らの話し声を聞きつけたのか、控室の扉が内側から開きました。そして、その向こうからずん子がよく見知った二人の少女の顔が覗きます。
こちらこそですわ!(* 'ω')ノ 立ち話もいいですけど、せっかくのうどんがのびてしまいますから、食べながらお話ししましょうか。
――しのびさん、やっぱりうどんは関西風の人なんですか?
お盆を手にして困り顔を浮かべているずん子を恍惚の表情で見ながら、きりたんがビシィ! と右手の人差し指を前に突き出します。
――ずばり、今日ねえさまが作ったうどん――関西風ではなく、秋田県の名物、『稲庭うどん』ですね?
だ、だから関西風じゃなくて……あえて言うなら秋田風? なの。期待してたらごめんね、しのびちゃん。……しのびちゃん?
――……しのびさん?
認めへんでちんちくりん! うどんは関西! 関西はうどん! アンタの手打ちの実力がどんなもんか、うちが試したる!
こうして、しのびときりたんによる手打ちうどん対決が行われることとなったのです。
(――というわけで時は戻って、一時間後・厨房――)
きりたんとしのびがうどんを打つ音が厨房に響きます。取り残されたずん子とイタコ姉さまは、とりあえずまかないのうどんを平らげたあと、そらさんに電話して、めたんを呼び出してもらいました。
いやー! さすがに讃岐うどんさんには敵いませんわ! ぜひとも食べ比べして、審判を下してな! (情報収集のためにちんちくりんを挑発したのはええが、また厄介なのが来てしもた……。とりあえず分身して対処したのはええけど、長引くと不利やなあ……)
わたくしは「四国めたん」じゃなくて『漆黒の』めたんなのだけれど……。それはそれとして、讃岐うどんも関西風うどんも稲庭うどんも、味にしたって製法にしたって完全に『別物』よ? 魂の場所が異なる「モノ」たちを、わたくしが『評価――スラッシュ・スルー――』してもいいのかしら。
そこは、あたしたちも審判に参加することで解決ですわ(≧▽≦)ゞ めたちゃんはどっしりと構えて、自分の味覚で評価を下してくれてOKですわよ。
いえ、姉さま。たぶん、めたんちゃんが言ってるのはそういうことじゃないと思います……(ノ∀`;)
苦笑しながら言うずん子に不敵なウインクを飛ばして、めたんは真剣な顔でしのび(分身体)に向き合います。何もかもを見通されているような感覚がして、しのびの額に嫌な汗が浮かびますが――。
『関西風忍術!』っていう『叫び――コール――』は格好悪いと思うのよ。それこそ、うどんみたいじゃない? もうちょっとこう……せっかく派手な技が多いのだし、口上と技名を工夫して、映えるようにした方が、自分の気分も乗ってくるんじゃないかと思ってね? ほら、わたくしのノートにね?
――だばあ。
そう言って、めたんは学校で出た古紙の裏紙をホッチキスで留めた清貧な「ノート」を大量に積み上げます。そこには、意外と可愛らしい字で、普通に寒気がする設定やら用語やらが書き連ねてありました。
……ど、どれどれ( ´Д` )「まずは両脚を揃えてすらりとしたシルエットを強調し、マフラーを風にたなびかせる。そして腕を組みつつBGM。口上は『天が呼ぶ、地が呼ぶ、愛が呼ぶ! 世界の「影」を駆ける女忍者――「関西しのび」! 煉獄の盟約に付き従い、只今推参!』」 ……う、うん……。
? 今の、驚く『刻――タイミング――』かしら……。
まあいいわ。それで、どうかしら忍者さん? 恥ずかしながら、わたくしも忍者のことには疎くて。もっと格好いい用語とかがあったらぜひご教示いただいて、使ってもらいたいのだけれど。ほら、例えばこれとか傑作なのよ? 『闇に紛れる一筋の影』というのがテーマでね? 口上から技名までそれを……
楽しそうなめたんの追い打ちに、しのびの思考が混ぜ返されます。こうなってしまった彼女は最早止めようがないのか、ずん子もイタコ姉さまも困ったような笑顔を浮かべて見守るばかりで――しのびは、慌てて白旗を揚げました。
た、タンマタンマ!! うどんができたで!! (読心術使いが三人なんてやってられんわ!! さっさと退却や!!)
――わたしの「稲庭うどん」も完成ですよ。今持っていくので、ちょっと待っててくださいね。
厨房にいる方のしのびがそう告げると、ずん子たちの前にいた分身体のしのびが砂のように溶けて消えてしまいました。そして、彼女の代わりに厨房からおいしそうなダシの匂いが漂ってきます。
三人分の稲庭うどんをお盆に載せて歩くきりたんの姿を、しのび(分身前)が目で追い、ほくそ笑みます。それもそのはず、きりたんの歩く道の先には――。
ちょっとは避ける素振り見せろや!! ハラハラするやろ!! それともアレか!? 「未来予知」でうちがアンタの前に飛び出すことまで予知済やってのか!?
大声で叫んだしのびの姿に、ファミレス内が静寂に包まれます。
雷に打たれたように動揺するしのびとは対照的に、きりたんはぽかーんと立ち尽くしています。やがて彼女はしのびの「勘違い」の原因を察したのか、「――ああ!」と笑います。
混乱していたしのびの耳には、めたんとイタコ姉さまの言葉が光明のように聞こえたようです。突然興奮したしのびのせいで、ファミレスは再び驚きに包まれました。
それやそれ!! なんでうちの考えてること分かるんや!! しかも中二病ピンクだけじゃなくて姉ちゃんとずん子先輩まで!! 未来予知はともかく、アンタらみんな読心術使えるんやろ!? そうなんやろ!? もう降参するから、正直に言ってくれや!!
『精神感応――サイコメトリー――』系の能力者が歪むのにお決まりのパターンね。ちなみに、わたくしのこの純白の白ロリファッションは、そんな世界の悪意に晒され続けることで覚醒しかねないわたくしの『真の姿――アルマ――』に枷をかける拘束具であって……。
え? ま、まあそれに近いかも……。だって……(;´Д`)
――そして、ずん子が真実を告げます。
(――その日の夜・「ふるさと女学院」屋上――)
『……あー。ほ、報告はそれだけか?』
衝撃のカミングアウトを受けたしのびの声は、ずいぶん凹んでいました。「定時報告」を受ける「影」の声の人も、ずいぶんやりにくそうです。
『……あ、ああ。そうだな……え? 元帥? 何かお言葉が……ええ、ええ。承知しました。では、その旨伝えて参ります』
通信機の向こうで、「影」の声が遠ざかり――代わりに、何か巨大なものが蠢く空気の振動が響いてきます。どうやら、アジトに鎮座していた「元帥」こと、巨大な「何か」が活動をして、「影」の声に言伝をしたようでした。
『おい、しのび。元帥からお言葉だ。「それは裏を返せば、東北ずん子の妹が未来予知の能力を持っているわけでも、友人が読心術を持っているわけでもないということだ。つまり、貴様の斥候活動はむしろやりやすくなったのではないか」……とな』
『元帥の仰るとおりだ。貴様がいかに工夫しようとも問答無用で読み取られてしまうような、そんな能力とは違って――今回のことは、貴様自身の問題だからな。努力次第で、どうとにもなる。それに――』
『……ああ。その調子だ。では、引き続き任務を続行せよ。――三ツ星輝く新世界のために』
しのびの顔に、生気が戻ってきます。単純な彼女は、立ち直るのもずいぶん早いようです。
――そして彼女は飛び立つと、東北の夜の闇に紛れ、笑い声だけを残してどこかへ消えていきました。
――その後、厨房を勝手に使った罰として「ファミレスの制服&エプロン洗濯係一ヶ月」が課され、ずん子が見事なとばっちりを受けますが――それはまた、別のお話。
――おわり―― (※今回もまとめのコメント欄にて感想をお待ちしています! また、まとめのコメント欄にずん子のイラストを投稿してくださる方も募集中です! コメント欄に投稿していただいたイラストに限り、公式から転載させていただく可能性がありますので予めご了承くださいね。)
次回はこちら http://inove.jp/ivsid1424




























