どんなタイトルにも(※ポロリもあるよ!)と付け足すと何となく気になる件について ※ポロリもあるよ!
「最近のラノベはタイトルが長い!」という意見がありますが、じゃあかつては高尚なタイトルばかりだったかというと、別にそんなことはありません。新聞紙のみがTV番組情報を知る唯一の時代だったころは、逆にあのキツキツの番組欄の特性を逆手にとって、「Hの真実」とだけ書いて僕たちを深夜にこっそり突き動かしたあげく、その実は「ホルストの真実」だったりしてクラシックに目覚めさせられたものです(遠い目)。その時代から考えれば、名は体を表す現在のライトノベルって、なかなか親切なものに見えてきませんか?
(――春分の日・東北家――)
東北家。手作りの飾り付けが廊下や室内を彩っています。無事にホワイトデーのお返しも済み、「大都会」本部への帰還期限となってしまったつるぎに対して、今日は、ずん子たちがお別れパーティを開催することになっていました。
――ピンポーン。
つるぎを招き入れようとしたずん子の耳に、「た、宅急便でーす」という声が聞こえてきました。妙にくぐもっているその声を不審に思いながら、彼女が扉を開けると――。
傾けないと東北家に入ってこられないほどの巨大な段ボールが、入り口を塞いでいました。
配達のお兄ちゃん「はぁ……はぁ……。ちゅ、中部つるぎさんは……」
配達のお兄ちゃん「せ、せんべ……餞別……だ……そうです……」(ガクゥ
あまりの重量に――配達のお兄さんは、まるでマラトンからアテネまで勝利の報告をしたギリシア軍兵士のように、その場に倒れました。
(――15分後――)
ずん子たち全員の協力によって、巨大な宅配便はリビングの室内へと運び込まれていました。事前に用意してあった色んなお菓子などをどけて床の上に置かれた「それ」は、圧倒的な存在感で部屋の空気を支配しています。
ビッ、ビッと、愛剣の「信長」でテープに切れ目を入れながら、つるぎが段ボールを解体していきます。
見ているだけでうっとりしてしまいそうな剣捌きです。段ボールに包まれていた「それ」は、みるみるうちに、その鋼鉄のボディを空気に晒し――。
――正体を明らかにした「巨大な力士」の人形に見下ろされ、つるぎは、肺の中の空気を全部吐き出すことになりました。
ずん子が戸惑うのも無理はありません。しのびの裾をひっぱってリビングを飛び出すつるぎの姿は、「いついかなる時でも凛々しくあれ、大都会!」とはとても呼べないものでした。
(――廊下――)
\きゃあああああぁぁぁぁっ!!??/
しのびとともに脂汗を浮かべ、目を泳がせて戸惑うつるぎの耳に、リビングにいたずん子たちの悲鳴が響きます。そして――それと同時に、\ずしーん/という、何か巨大な鉄塊が床を踏み砕く音も聞こえてきて、つるぎとしのびの顔から、血の気が失せました。
めりめり、と。不器用そうな手を張り手に使って扉をぶち抜き、きなこ棒のような腕が現れます。身長のせいで頭がぶつかるのか、壁を破壊しながら現れた「それ」は、幼児のように素朴に、全てのものをなぎ払って真っ直ぐに前進する、からくり人形の相撲力士です。
――おもちゃめいたその力士の無骨な笑顔に見据えられたつるぎは、全身に鳥肌が立つのを感じながら、しのびの裾を引っ張って東北家から飛び出しました。
(――玄関――)
\きゃあああああぁぁぁぁっ!!////
脂汗の量をますます増しながら、先ほどと似たようなやり取りを繰り返すつるぎとしのびの耳に、ずん子たちの黄色い悲鳴が響きました。
『ドーモ、ワタシハ、カワイイ、オモチャ=デス』
『ヘイヘーイ。ソンナコト、アリマセーンヨー!! ナカノ=ヒトナンテー、イマセンヨー?』
ガッションガッションと首や両肩の関節のモーターを回転させる「力士」は、巨大ではありますが、よく見れば愛嬌があって、なかなかに愛おしく見えてきます。やがて、規則正しい「力士」の動きを温かく見守っていたずん子たちのうち背中側にいたきりたんが、「あること」に気付きました。
そして、髪の毛についたゴミを払うかのような気軽さで、「力士」のマゲに手を伸ばします。
――が。
シェイハァッ!!!(ビシィ!!
――ドゴォッ!!
その巨体に似合わぬ敏捷さで旋回した「力士」のごんぶとな腕が唸るようにきりたんの腹にねじ込まれ、彼女は、目にも留まらぬ速さで廊下の突き当たりまで吹っ飛ばされてしまいました。
『オスモ=サン、マゲ、サワル、ダメ、ゼッタイ!』
そらさんが頭部の地球儀を発光させながら回転し、「力士」の周囲に無重力空間を作り出します。床と天井に付着していた微かな埃が柱状になって舞い上がり、当然、その中心にいる「力士」の身体も浮かぶかと思いきや――、
『……ノコッタ、ノコッタ!!』
装置を発動したそらさん自身にも、何が起こっているのか分からないようです。「力士」によって「反射」、あるいは「コピー」された無重力空間は、油断していたそらさんのチューブトップにも作用し、彼女がもがくにつれ、上へとずらしていきます。そして、ついに……。
――ぽろん。
にべもなく断ったうさぎはともかく、いつの間にかめたんの技名を採用したイタコ姉さまと、めたん本人はノリノリで構えを取ります。
「「はああああああああああッ!!」」と声をシンクロさせて飛びかかる二人の実体のない刃(というか親指)がマゲボタンを襲います。絶妙の間合いで放たれたその連係攻撃を前にしては、いかに反射神経のいい「力士」であろうと、とても対処しきれないように見えましたが――。
――彼女らが、「マゲ」に触れる直前のことでした。
『ハッケヨォイ!!』
ずん子の目を真っ直ぐ見てそう言うと、うさぎはそっと、「ずんだアロー」を差し出しました。
ずん子の表情が引き締まります。ポケットから常備用のずんだを取り出して手早く矢尻に塗りつけた彼女は、流れるように弓を構え、「力士」の後頭部へと狙いを定めました。
シェイハアッ!?
抜群の精度で放たれた吸盤型の矢尻が空気を裂いて直進します。うさぎの妖力に気を取られていた「力士」は、背後から迫る矢に気付く様子はありませんでした。どうやら、うさぎの推測は当たっていたようです。
……!!??(ビクゥン!!
――ぽちり、と。
ずん子の矢によって見事、彼のマゲは押し下げられました。それと同時に、床に投げ出された友人たちが、せっせと乱れた服を元に戻し始めます。
もくもくと、「力士」の身体中の隙間から蒸気が漏れ出しています。視界が曇って先が全く見通せない中、反射的に飛び出したつるぎの耳に聞こえてきたのは――、まだ第二次性徴も迎えていない、甲高い少女の声。
……チッ。あー、もうやってらんない。ちゃんこのやる気、萎えちゃった!
曇っていた視界が、徐々に晴れていきます。いつの間にか隣に飛び出してきていたつるぎが跪くのを見て、ずん子が戸惑った様子で語りかけました。
ちょっと、つるぎ? アンタなんで帰ってこないのよ。遊び相手がいなくなっちゃったからー、わざわざこのアタシ――ちゃんこが、東北くんだりまで来てあげたんだからね!
右手に幣を構え、左手を薄い胸板と巫女服の間に滑り込ませて、うさぎが浄化の構えを取ります。その瞳は普段の彼女からは考えもつかないほどに鋭く、まるで、目の前の存在を「敵」として認識しているかのようでした。
東北家の廊下を覆っていた蒸気は、いつの間にか水滴へと変化していました。その結露に巨体を濡らしながら、ずん子たちの前に君臨する「力士」の顔の中に、少女はいました。
高貴な存在だけが身につけることの出来る、紫紺の着物。あまりの妖力が溢れているのか、アメジストのように煌めく空色の髪。
「大都会」の総帥が操る「力士」の腕が、まるで宣戦布告のように吼えました。
――おわり―― (※今回もまとめのコメント欄にて感想をお待ちしています! また、まとめのコメント欄にずん子のイラストを投稿してくださる方も募集中です!)
次回はこちら http://inove.jp/ivsid1432












































